再検査2回目(腹部へのガン転移の確認)

 前回の6月23日につづき2回目の検査。今日は腹部のCTと胃カメラを再度飲まされた。

 今日のCTは腫瘍をマークする薬の投与はなかった。忘れてるのかなとも思ったけど、まぁいいかとそのまま撮影した。あっという間に終了。

 そして2度目の胃カメラ。2度目とはいえやはり苦しかった。

 今日の胃カメラはガンの部位を確定することが目的だったらしい。ガンのあるところが胃角を中心に幽門部付近まで伸びているらしく、前回の検査では全体を撮影できていなかったようだ。

 

 検査中Drが”カン!”と甲高い金属音を鳴らした。検査中は何の音か分からなかったけれど、ガンのある周囲(ガンがないと思われるところ)から生検用の細胞をとって、同じところにクリップを取り付けたときの音だったようだ。

 検査後に取り付けたクリップの写真をみせられたけれど、電気機器の内部にある抵抗のようなシマシマ模様だった。前回同様に検査後数時間は飲食禁止との指示だったが、それが過ぎれば食事可能とのこと。どのような仕組みで胃の内部に取り付けてあるのか分からないけれど、食事で外れないのかなと少し心配した。一番心配したのは外れるときに胃壁を引きちぎって外れたりしないのかなということ。

 

 ガンの告知から2週間強。来週には主治医と今回の検査結果をもとに手術の日程を決めることになるのだろうけど、こんなに悠長でいいのかなと正直心配もある。確かに胃カメラの予約の影響で2回目の検査が今日になってしまったけど、ガン患者は優先させるとかってないのかなとも思った。仕方がないことなのか、心配する必要がないことなのか分からない。不安な日々が続く。

 自分の精神が強いとは思わないけれど、こんな状態で日々を過ごしていると壊れちゃう人もいるんじゃないかなと考えたりもしてみた。

 まぁなるようにしかならないか。

再検査1回目(胸部へのガン転移の確認)

 昨日のDrの指示により再検査を受けてきた。今日の検査はガンの転移を調べるもの。診療上のルールのせいか、胸部と腹部は1日で受けることができないらしい。今日は、点滴から腫瘍に印をつける薬を投与してCTを受けた。

 

 検査自体はあっという間だった。検査室に入ってから出てくるまで10分もかからなかったと思う。MRIは結構長くて大変だけど、CTは早くて楽だ。ただ、この検査の結果によっては、今後の状況が変わってくるため、何だか気が重い。意味もなく転移がないこと祈ってしまったけど、今さら祈っても仕方ないよなとも思った。

 

 検査が想定よりも早く終わったため、付近を散歩してみた。昔から知っている街だけど何かが違って見える。何となく自分一人が孤立しているような錯覚に襲われる。

 「こんな気持ちになるんだなぁ」

 ひとつの発見だった。

検査結果(ピロリ菌はいなかったのに)

 生検の結果を聞きに行った。

 何とも言えない重苦しい気分に支配される。判決前の被告の気分であろうか?いや、自分の行動に対する判決であるならばまだしも、これはおそらく自身にとっては誤認逮捕されたうえでの判決を待つような気分であろうかと思う。何も悪いことはしていないのに、有罪が言い渡されるような。

 順番がきたようで、入室を促された。

 「こんにちは。お世話になります」明るく振る舞ってみた。

 「お忙しいところ恐れ入ります。こちらにお掛けください」Drが応じたものの、私の方を見ずに検査結果であろうペーパーから視線を外さなかったことから、すべてを感じとった。

 「大変残念な結果ですが、ガンが見つかりました」

 視線をペーパーから外さずにDrが説明する。ある程度予想はしていたものの、私の口から出た言葉は「へぇ」だった。恐らく予想をしていたから言葉が出たのであろうと思う。まるっきりの想定外だったら言葉は失われていただろう。自分自身を平常に保つための精一杯が「へぇ」だった。

 「印環細胞を伴う低分化腺癌といって、ガンの細胞が印鑑状の丸い形をしていて・・」Drの説明が続くが、やはりショックだったのだろう。私が記憶できたのはそこまでだった。

 「ピロリ菌はどうだったのですか?」

 「ピロリ菌は見つかりませんでした」

 「ピロリ菌がなくてもガンになるんですか?」

 「このタイプのガンはピロリ菌の有無に関係なく見つかります」

 いくつかの質問をした後にDrが続けた。

 「このタイプのガンは小さければ内視鏡で削り取ることが出来るのですが、今回見つかったガンの大きさからいって切除術になるかと思います。なので、内科としてできることはここまでとなりますが、早急に対応したほうが良いと思うので、外科を紹介します。これから連絡をしますので受診をしてください」Drが受話器を取った。

 

 外科の受付で内科からの紹介で来訪した旨を告げると、Drの待つ部屋に案内された。およそ50台半ばの快活なDrで明るく対応してくれる。

 「お世話になります」私が挨拶すると「こんにちは。ここ座って」丸椅子をすすめてくれた。

 「びっくりしたと思うけど、写真見た限りでは初期だと思うので取っちゃえば大丈夫だから」明るく説明してくれる。「ただ、ガンには高中低とあって、この低分化腺癌というのは一番悪性度が高いものです」この言葉にもショックを受けた。

 「ある程度の大きさが認められるのと、悪性度が高いことから開腹による切除術(腹腔鏡手術でないこと)になるかと思います。恐らく1/2から2/3ぐらい切り取ることになると思いますが、詳しい検査をしてみないと分かりません。なのでこれから放射線科と内視鏡科へ行って検査の予約をしてきてください」

 この検査の目的は、ガンの深度・大きさ・転移の有無を調べるためのものであることを説明された。つまり、この検査の結果によっては治療方針が先ほどの説明と違ってくることが汲み取れる。恐らく不安が表情に出ていたのであろう。

 「大丈夫だから。取っちゃえば元気になるから」Drは明るく私の肩を叩いた。

 

胃カメラ3(陥凹性病変疑いは異常なし)

 「お疲れさまでした。これで終了です」看護師さんから声を掛けられた。口からゆっくりと黒い管が引き抜かれていく。驚いたのはその長さだった。おそらくそんなに長さはないのだろうけど、1メートルほどの長さのように感じた。

 すべての管が引き抜かれると、ティッシュパーペーの箱を渡され「口回りを拭ってください」とのこと。涙と唾液まみれの顔をなぜか少し悲しい気分で拭った。

 やっと解放されたので、お腹の空気を解放するためとっとと検査室を出ようと思ったら、「検査の内容を説明しますので、こちらへお掛けください」と誘導される。思わず「結構です」と言いそうになったが、一応大人だしと思い直し椅子に掛ける。お腹の張りを抱えながら「こういうプレイが好きな人もいるのかな」なんてつまらないことを考えた。

 「ドッグで指摘されたところはなんでもないですね。胃の形がそもそも変形していて陥没しているように見えるようです」Drが言った。その言葉に少し安心したが「ただ、この部分分かりますか?」モニターを指しながらDrが続ける。「色が変わっているでしょう?他の部分はピンク色だけど、ここの茶色がかっているところ。これが何なのか分からないので、この部分から2か所細胞を採りました。他にも荒れているところから2か所採っています」つまり生検に回すようだ。詳しく検査をしてみないと分からないので、結果については次回の外来で説明するとのこと。ここで軽いショックを受ける。

 検査室を出ると看護師さんに注意書きを渡された。そこには「本日は細胞を採取したので、飲食は3時間後からにしてください。またアルコールや刺激物の摂取は絶対に避けてください」とある。せっかく街中にでてきたのだから外食してから帰宅しようと思っていたところそれができないことに、また少しショックを受けた。

 無事に検査から解放されたものの、何となく気が重いまま会計を待っていると、どんどんお腹が痛くなってきた。麻酔が切れてきたのだろう。お腹の張りと痛みでだんだん冷汗がでてくる。「こんなに痛むなんて聞いてないよ」と思いつつ先ほどの注意書きを見ると「検査後1~2時間ほどは、お腹の張りと痛みが残る場合がありますが、自然におさまります」とある。「これは我慢しろということか」とあきらめたが、とても歩いて動ける状態ではない。仕方がないので、会計は終わっていたが待っているふりをして座っていると約1時間で痛みが引いてきた。

 胃カメラがとても嫌いになった1日だった。

胃カメラ2(苦しぃ!)

 「それでは始めますね」Drの手には黒くて長い、およそ直径1cm程度の管が握られていた。口にマウスピースをはめられているので、何のリアクションもできないまま管が喉に入ってきた。待合室で聞いていたように嘔吐反射が来るのだろうなと思っていたら、やっぱり来ました。もちろん胃の中には何もないのでリバースしようがないのですが、なぜか涙と唾液が出てきた。想像していた通りわかっちゃいたけど苦しい。

 まだ働いていたころ、胃カメラを経験した人から聞いた話では「最近の胃カメラは何の苦しさもなくて、検査はスルッと終わるよ」なんて聞いていたから、少しなめていたところもあったせいか、とても苦しかった。「もしかしたら、このDrヘタ?」なんて少し疑ってもしまった。後で少し調べたら胃カメラにも色々種類があって、最新のものは結構細かったり、検査の目的によっては鼻からでもよかったりするよう。今回は精密検査だから良く調べられるように太い管&口からだったのかも。

 苦しさをこらえながらも検査は進んでいく。もともと胃腸が弱かったこともあって、色々荒れているようなことをDrが呟いている。また、胃壁を伸ばすのが目的のようだが空気を入れられるようで、これがだんだん効いてくる。送り込まれた空気が腸の方にも移動するのでだんだんお腹全体が張ってきて、これが苦しさを倍増させる。入口から出口までを虐められているよう。一番困ったのが、送り込まれた空気が最終的に出てこようとするときに、空砲なのか実体を伴っているのか分からず、我慢するしかなかったこと。空気がどんどん送り込まれるのに出すことが出来ない状態。途中で「トイレ行かせてください」と言おうと思ったけど、この状態でどうやって行くのだと思い直し我慢することに決定。

 「なんだこりゃ?」Drがまたつぶやく。「なんだこりゃ」と言われても返答のしようもなく苦しみの中で「私の方が知りたい」と心の中で呟いた。このころになると苦しみは変わらないのに少し余裕がでてくるようになっていた。「痛み」って我慢するのは大変だけど、「苦しさ」って結構慣れる?もんだなって、そんなことを少し考えた。すると「検査用にいくつか細胞を採取します。痛みはないので大丈夫です」Drが言った。「細胞を採るってことは、”なんだこりゃ”が怪しいんだな」と涙と唾液を流しながら思ったが、早く終わって欲しいことだけを祈り続けていた。