胃カメラ3(陥凹性病変疑いは異常なし)

 「お疲れさまでした。これで終了です」看護師さんから声を掛けられた。口からゆっくりと黒い管が引き抜かれていく。驚いたのはその長さだった。おそらくそんなに長さはないのだろうけど、1メートルほどの長さのように感じた。

 すべての管が引き抜かれると、ティッシュパーペーの箱を渡され「口回りを拭ってください」とのこと。涙と唾液まみれの顔をなぜか少し悲しい気分で拭った。

 やっと解放されたので、お腹の空気を解放するためとっとと検査室を出ようと思ったら、「検査の内容を説明しますので、こちらへお掛けください」と誘導される。思わず「結構です」と言いそうになったが、一応大人だしと思い直し椅子に掛ける。お腹の張りを抱えながら「こういうプレイが好きな人もいるのかな」なんてつまらないことを考えた。

 「ドッグで指摘されたところはなんでもないですね。胃の形がそもそも変形していて陥没しているように見えるようです」Drが言った。その言葉に少し安心したが「ただ、この部分分かりますか?」モニターを指しながらDrが続ける。「色が変わっているでしょう?他の部分はピンク色だけど、ここの茶色がかっているところ。これが何なのか分からないので、この部分から2か所細胞を採りました。他にも荒れているところから2か所採っています」つまり生検に回すようだ。詳しく検査をしてみないと分からないので、結果については次回の外来で説明するとのこと。ここで軽いショックを受ける。

 検査室を出ると看護師さんに注意書きを渡された。そこには「本日は細胞を採取したので、飲食は3時間後からにしてください。またアルコールや刺激物の摂取は絶対に避けてください」とある。せっかく街中にでてきたのだから外食してから帰宅しようと思っていたところそれができないことに、また少しショックを受けた。

 無事に検査から解放されたものの、何となく気が重いまま会計を待っていると、どんどんお腹が痛くなってきた。麻酔が切れてきたのだろう。お腹の張りと痛みでだんだん冷汗がでてくる。「こんなに痛むなんて聞いてないよ」と思いつつ先ほどの注意書きを見ると「検査後1~2時間ほどは、お腹の張りと痛みが残る場合がありますが、自然におさまります」とある。「これは我慢しろということか」とあきらめたが、とても歩いて動ける状態ではない。仕方がないので、会計は終わっていたが待っているふりをして座っていると約1時間で痛みが引いてきた。

 胃カメラがとても嫌いになった1日だった。