検査結果(ピロリ菌はいなかったのに)

 生検の結果を聞きに行った。

 何とも言えない重苦しい気分に支配される。判決前の被告の気分であろうか?いや、自分の行動に対する判決であるならばまだしも、これはおそらく自身にとっては誤認逮捕されたうえでの判決を待つような気分であろうかと思う。何も悪いことはしていないのに、有罪が言い渡されるような。

 順番がきたようで、入室を促された。

 「こんにちは。お世話になります」明るく振る舞ってみた。

 「お忙しいところ恐れ入ります。こちらにお掛けください」Drが応じたものの、私の方を見ずに検査結果であろうペーパーから視線を外さなかったことから、すべてを感じとった。

 「大変残念な結果ですが、ガンが見つかりました」

 視線をペーパーから外さずにDrが説明する。ある程度予想はしていたものの、私の口から出た言葉は「へぇ」だった。恐らく予想をしていたから言葉が出たのであろうと思う。まるっきりの想定外だったら言葉は失われていただろう。自分自身を平常に保つための精一杯が「へぇ」だった。

 「印環細胞を伴う低分化腺癌といって、ガンの細胞が印鑑状の丸い形をしていて・・」Drの説明が続くが、やはりショックだったのだろう。私が記憶できたのはそこまでだった。

 「ピロリ菌はどうだったのですか?」

 「ピロリ菌は見つかりませんでした」

 「ピロリ菌がなくてもガンになるんですか?」

 「このタイプのガンはピロリ菌の有無に関係なく見つかります」

 いくつかの質問をした後にDrが続けた。

 「このタイプのガンは小さければ内視鏡で削り取ることが出来るのですが、今回見つかったガンの大きさからいって切除術になるかと思います。なので、内科としてできることはここまでとなりますが、早急に対応したほうが良いと思うので、外科を紹介します。これから連絡をしますので受診をしてください」Drが受話器を取った。

 

 外科の受付で内科からの紹介で来訪した旨を告げると、Drの待つ部屋に案内された。およそ50台半ばの快活なDrで明るく対応してくれる。

 「お世話になります」私が挨拶すると「こんにちは。ここ座って」丸椅子をすすめてくれた。

 「びっくりしたと思うけど、写真見た限りでは初期だと思うので取っちゃえば大丈夫だから」明るく説明してくれる。「ただ、ガンには高中低とあって、この低分化腺癌というのは一番悪性度が高いものです」この言葉にもショックを受けた。

 「ある程度の大きさが認められるのと、悪性度が高いことから開腹による切除術(腹腔鏡手術でないこと)になるかと思います。恐らく1/2から2/3ぐらい切り取ることになると思いますが、詳しい検査をしてみないと分かりません。なのでこれから放射線科と内視鏡科へ行って検査の予約をしてきてください」

 この検査の目的は、ガンの深度・大きさ・転移の有無を調べるためのものであることを説明された。つまり、この検査の結果によっては治療方針が先ほどの説明と違ってくることが汲み取れる。恐らく不安が表情に出ていたのであろう。

 「大丈夫だから。取っちゃえば元気になるから」Drは明るく私の肩を叩いた。