胃カメラ2(苦しぃ!)

 「それでは始めますね」Drの手には黒くて長い、およそ直径1cm程度の管が握られていた。口にマウスピースをはめられているので、何のリアクションもできないまま管が喉に入ってきた。待合室で聞いていたように嘔吐反射が来るのだろうなと思っていたら、やっぱり来ました。もちろん胃の中には何もないのでリバースしようがないのですが、なぜか涙と唾液が出てきた。想像していた通りわかっちゃいたけど苦しい。

 まだ働いていたころ、胃カメラを経験した人から聞いた話では「最近の胃カメラは何の苦しさもなくて、検査はスルッと終わるよ」なんて聞いていたから、少しなめていたところもあったせいか、とても苦しかった。「もしかしたら、このDrヘタ?」なんて少し疑ってもしまった。後で少し調べたら胃カメラにも色々種類があって、最新のものは結構細かったり、検査の目的によっては鼻からでもよかったりするよう。今回は精密検査だから良く調べられるように太い管&口からだったのかも。

 苦しさをこらえながらも検査は進んでいく。もともと胃腸が弱かったこともあって、色々荒れているようなことをDrが呟いている。また、胃壁を伸ばすのが目的のようだが空気を入れられるようで、これがだんだん効いてくる。送り込まれた空気が腸の方にも移動するのでだんだんお腹全体が張ってきて、これが苦しさを倍増させる。入口から出口までを虐められているよう。一番困ったのが、送り込まれた空気が最終的に出てこようとするときに、空砲なのか実体を伴っているのか分からず、我慢するしかなかったこと。空気がどんどん送り込まれるのに出すことが出来ない状態。途中で「トイレ行かせてください」と言おうと思ったけど、この状態でどうやって行くのだと思い直し我慢することに決定。

 「なんだこりゃ?」Drがまたつぶやく。「なんだこりゃ」と言われても返答のしようもなく苦しみの中で「私の方が知りたい」と心の中で呟いた。このころになると苦しみは変わらないのに少し余裕がでてくるようになっていた。「痛み」って我慢するのは大変だけど、「苦しさ」って結構慣れる?もんだなって、そんなことを少し考えた。すると「検査用にいくつか細胞を採取します。痛みはないので大丈夫です」Drが言った。「細胞を採るってことは、”なんだこりゃ”が怪しいんだな」と涙と唾液を流しながら思ったが、早く終わって欲しいことだけを祈り続けていた。